”セックスを拒否する妻”はどんな状況でどんな気持ちなのか。
4人の妻たちに直接話をきいてみたこのシリーズ。
今回は3人目、ハルカさんにお話しをききました。
前回の記事を読んでないうっかりさんは、まずこちらを読んでほしい。
3人目・ハルカさん(仮名・30代・結婚7年目)
ツイッターで人さがし
知り合いだけじゃ限界がある、とかんがえ、ぼくはツイッターで“レスり妻”さんを探す旅に出た。
それらしいワードで検索すると、“旦那〇ね”というツイートが並ぶ。
俳句の季語のように、“旦那〇ね”を入れるという界隈の決まりがあるのだろう。風流だ。趣が深い。
このひとたちの渦に、飛びこまなくてはならないのか。
Sexy Zoneのライブ会場にBTSのうちわを持って参加するような気分だ。
彼女たちがもっとも嫌う“旦那”という属性をもつ自分と、コンタクトをとってくれるひとはいるのか?
ここで“数を撃つ”作戦は、悪手だ。かたっぱしからDMを送るみたいな。
以前noteに書くため、セックス頻度がいちばん高いギリシャ人に秘訣をきこうとDMをしまくってみた。
が、反応はイマイチだった。その反省を今回は活かす。
かといって、じょじょに距離を縮め、仲良くなったころ改めて話をきかせてもらうというのも効率がわるい。っていうかはっきりいってめんどくさい。
なのでツイート内容をしっかりとみて、“このひとだ”と思ったら、最初からこの記事のことを説明して、DM上で話を聞かせてもらおうと決めた。
いわゆる“旦那デスノート”界隈に迷いこんでしまったので、人探しは難航した。
みんなとにかく怒っている。こんなスーパーサイヤ人になりかけているひとたちに、恐ろしくてとうていDMなんて出来ない。
やや心を折られながら“旦那きらい”“旦那とのセックスがいや”なアカウントを見ていった。
するとひときわ異彩を放つアカウントを見つけた。
ツイート内容を要約すると、「旦那がとにかく嫌い。モラハラ野郎だから。セックスはもうずっとしてない」ということだった。
しかし感情をぶつけながらも、どこか理路整然としていて、冷静な状況分析がそこにはあった。
そしてツイートで使われている、乱暴な言葉ときれいな言葉のバランスが絶妙で、ぼくは魅了された。ここで紹介できないのが残念だけど。
このひとの話を聞きたい!とつよく思ったぼくは、緊張しながらもギリシャ人以来のDMを送った。寺の見習い小坊主が故郷の母に手紙を書くように、ていねいに心をこめて。
DM送信して半日経った23時。フラれ気分でBOX買いしたパルムをヤケ喰いしようとしたころ……返信が来た!
結婚まえの不安が現実となってくる
もしかしたら「DMなんか送んなよ!きめーんだよゲロ野郎!」という返信かもしれない…とドキドキしながらDMを開く。
しかし
「はじめましてハルカです。DMありがとうございました。のきさんのブログとツイートを拝見させていただきました。とても面白くて興味深い内容でした。私でよかったらぜひ協力させてください」
ととてもていねいなメッセージを頂けた。
安心したぼくは、返信のお礼と聞きたいことを3つほど箇条書きしてDMを返した。
そしてハルカさんの返信にはこんな言葉が。
「さいしょにお伝えしたいことは、私はセックス自体が嫌いなわけじゃないし、奥さんとセックスをしたいのに出来ない、という男性の苦しさにも理解があるということ。私がセックスに対して語ることは、あくまでも“私が主人を大嫌い”というのを下敷きにしています。ですから一般論としてはかなり横暴になってしまいます」
ハルカさんには“レスられている”ひとを一緒くたにする単調な思考はなかった。
このほかのDMでもちょくちょく、レスられ側のひとを気づかう言葉があった。
やさしい。
何回かDMをやりとりさせてもらって、ハルカさんの状況と気持ちがだんだんと分かってきた。
まとめるとつぎのようになる。
ハルカさんは今年結婚7年目。旦那さん(ケンジさん・仮名)は7歳上でいまは40前半。
お子さんは8才と5才のふたり。
旦那さんは食品会社の卸会社につとめる会社員で、旅行で同じツアーに参加して知り合ったという。
「つきあっているときは基本的にはやさしかった。でもときどきイヤな一面を見せることがあったんです」
ケンジさんはふだんは温厚だけど、ちょっとしたことでものすごく機嫌が悪くなることがあったらしい。たとえばハルカさんが飲み会でほかの男性と盛りあがったとき、丸一日口をきかなくなる、など。
ほかにも人格的にすこし疑いたなくなる場面が、何回かあったという。
すこしの不安を抱えながらも、ハルカさんはケンジさんのプロポーズを受けた。
なんだかんだでケンジさんのことを好きだったからだ。
しかしハルカさんは言う。
「結婚するときはいったん恋心を脇によけといて、冷静に考えなきゃダメですよね。いろいろな角度から男性をみてみる。浮ついちゃってそれができなかった。すごく後悔しています」
結婚後、ケンジさんはハルカさんのことをバカにすることが多くなってきたという。
バカにするネタはおもに“高卒”。ケンジさんはいわゆるMARCH出らしい。
クイズ番組みてて答えまちがえるといちいち「これだから高卒は」といった感じでひとこと言ってくる。
それは小学生が好きな子をからかうノリじゃなく、本気でハルカさんをさげすむニュアンスがあったらしい。
ちなみにあとで分かったことだが、ハルカさんとぼくは同じ県の出身で、ハルカさんが通っていた高校は超エリート校。ぼくだけ特別ルールで“教科書持ちこみOK”になったとしても、絶対に受からない高校。
ハルカさんは、ケンジさんの人格を嫌いになって、セックスレスになった。
人格をいっさい信用できなくなる、その最初のできごとは妊娠中に起こった。
臨月をむかえて、かなり目立つようになってきたハルカさんのお腹。
そこに耳をあててケンジさんはこう言ったという。
「ドクンドクンっていってるな。あんまアタマよさそうな心音じゃないね。苦労かけられるだろうなー笑」
お腹に耳をあてて心音が聴こえるかは別にして、これから出産にのぞむ妻に言う言葉ではない。
これをハルカさんのDMでみたとき、多少のことではひかないぼくもおおいにひいた。
これ、冗談のつもりかもしれないけど、この世で笑うひとは一人もいないとおもう。
この瞬間、ハルカさんが結婚前に抱いていた不安は、くっきりとした現実になって見えてきたという。
抱かれることで自己嫌悪
ここまでDMでハルカさんとやりとりをして、ぼくは直接話をしたほうがいいのでは?と思うようになった。
ハルカさんの語ってくれることは、濃い。それを詳細にDMに書いてくれるので、相当な時間的負担をかけてしまっている。
そしてハルカさんにはもっと深い、ケンジさんに対して思うところがあるのではないか、と直感でおもっていた。
それは会話のなかでしか、うまく引き出せないような気がした。
そんな風に考えていると、ハルカさんからDMが来た。
前日に公開したこの記事のパート①の感想を、わざわざ送ってくれたのだ。
「すごくおもしろかったし、ブログに出てくる女性に共感しました。でも私も記事になるかとおもうとちょっと怖い笑」という内容。
記事をほめてもらってテンションが上がったので、思いきってZOOMで話してみませんか、と提案してみた。
すると意外にもすぐにハルカさんはOKの返事をくれた。
ZOOM開始時間の5分まえ。
はげしく緊張している自分がいた。
下心なしで面識ないひとと喋るのは、やっぱり震える。
しかしぼくはあくまでも迎える側。
なんとか話を盛りあげないといけない。
頭の中でグルグル作戦がまわる。
「どうする?話しやすいといえばオカマ。なんとかオカマキャラでいくか?いや付け焼刃のオカマなどバレるに決まっている。ではじつはぼくとハルカさんは生き別れの兄妹とでも言うか。いやそれよりもカルガモの親子が並んで…」
けっきょく頭のなかがオープニング初日の猫カフェのように混沌としたまま、予定の時間を迎えることになった。
「おはようございます。はじめまして」
と画面にうつるハルカさん。
あらかじめカメラオフでもいいですよ、と伝えておいたけど、顔を映してくれている。
オグシオの潮田玲子に似た感じの美人だった。
メールの文面からすると、ちょっと固い感じのひとかな、と想像していた。
けれど実際話してみると、すごく明るくて話しやすい感じのひとだった。
最初の雑談で同じ県内に住んでることが判明したこともあり、かなり打ち解けることができた。
よし、これならオカマのふりはしないで済みそうだ。
そしてしばらく世間話をしたあと、ぼくは本題にはいった。
「臨月のときの発言で、ハルカさんは一気に気持ちが冷めたとメールで教えてくれましたけど、ケンジさんはそれに気づいてましたか?」
「気づいてないと思います。わたし態度に出ないようにガマンしちゃうタイプだし」
ハルカさんはあきれたように言った。そして続ける。
「っていうか、根本的にあのひとは私の気持ちとかまったく想像してないと思います。なにがイヤとかなにが楽しい、とかそういうことを」
「結婚まえはやさしかったんですよね?」
「それは私のカン違いだったかもしれません。いまにして思えば…ですけど。やさしいっていっても、私が大事だからやさしくするというより、やさしくしてる自分自身が好きって感じかもしれません」
「ああ分かりますその感じ!クリケットをやってる女子学生がホントはクリケットを好きなわけじゃなくて、クリケットのラケットを持ち歩いてるアタシが好き、みたいな!」
「あ、はい…そんな感じかもしれません」
ハルカさんはなんとか同意してくれたけど、たぶんちがったのだろう。
ぼくは気を取りなおして、そのあともいろいろ聞いた。
ハルカさんは初めての出産をしてからも気持ちは変わらず、ケンジさん嫌いがどんどん加速していったらしい。
しかしそれに気づかず、ハルカさんを雑に扱い続けるケンジさん。育児への協力はほぼなし。おむつ交換の仕方すらまともに覚えなかったらしい。
それどころか自分の仕事がいかに大変かを語りつづけ、ワンオペ育児をこなすハルカさんへの気づかいなんてゼロだった、という。
「それなのに夜になるとこどもが寝ついた瞬間、求めてくるんです。週3、4回のペースで。赤ちゃんの世話で疲れてるからって言ってるのに」
「どれぐらいの割合で断っていたんですか?」
「だいたい半分ぐらいは受け入れてたと思います。断りきれなかった。こどもがまだ小さいし、離婚になったらやだな、ってこのときはまだ考えていました。それに断って不機嫌になられるのがホントにこわかった」
「その…そんなイヤな相手に抱かれて、いわゆる快楽的なものってありましたか?」
とても聞きづらい質問だけど、勇気をだして切りこんでみた。
「こんなに嫌いなのに、体が相手を受け入れられる状態になっちゃうのが、自分ですごくイヤでした。気持ちよくはなかったけど、やっぱりいじられると濡れるんです。すごく矛盾したことで、男のひとには伝わりにくいかもしれないけど…」
“口ではイヤがってるけど体は欲しがってる”といった、エロマンガのような単純なことではない。きっと言語化がむずかしい、女性の体と心の複雑な関係の部分なのだろう。
「終わったあとは、すごく自己嫌悪を感じました」
ぼくはかつてセックスを拒否される側だった。誘ってもかわされたとき、すごく自己嫌悪を感じた。
しかしセックスを拒否する側は、望まないセックスに至ったとき、自己嫌悪を感じるのかもしれない、と思った。
セックス拒否でこどもに被害が…
やがてハルカさんは、第2子を妊娠した。
そのときの気持ちを語ってくれた。
「私は体もあんまりつよくないので、育児に限界を感じてました。だから2人目は考えていなかったんです。なので彼に応じるときも必ずコンドームはつけてもらっていた。でもある日彼が“今日はなんか調子わるいなあ”とか言いながら途中でゴムを外したんです。ダメっていったけど、そのまま強引に中に出されたんです」
そしてそのたった1回の膣内射精で妊娠してしまったのだという。ハルカさんは妊娠が発覚したとき、ひとりで泣きながら、産むか産まないかですごく悩んだという。
「人として尊敬できない相手と、のぞまない行為をして出来ちゃった子。この子を産んじゃったら、私はずっと後悔しつづけるんじゃないか。産んだとしてもかわいがることが出来ないんじゃないか……そんなことをずっと考えてました」
ケンジさんにも妊娠のことは伝えず、数日悩みつづけたという。
「でもやっぱり産まないっていう判断はできませんでした。長男をみて、やっぱりかわいいなーって。変かもしれませんが、お腹の子を産まないっていうのが、長男みたいなかわいい子の存在をこの世から消すってことのような気がして」
そして次男を産んだハルカさん。
かわいがることが出来ないかも、というのはまったくの杞憂で、可愛くて仕方ないらしい。
次男が産まれたあとも、ケンジさんは育児も家事もほとんどしなかった。
相変わらず、仕事がいかにきついかを語り、専業主婦はラクだと決めつける暴言ばかりだったという。
結婚してからいちども、ハルカさんにねぎらいの言葉をかけたことはないらしい。
そして次男が産まれてから半年たったある日、ケンジさんはハルカさんの肩を抱いてきた。
これはケンジさんがセックスをするまえに、いつもしてくる行動らしい。
「イヤすぎて、泣いちゃったんです、わたし。2人目を産んで、彼への嫌悪感が限界にたっしたみたいでした」
泣いてるのをなぐさめるどころか、ケンジさんはハルカさんの服をまくりあげてきたという。
「ありえないぐらいキモチわるかったです。まさか泣いていることすら無視して、自分の欲を満たそうとするなんて。こわくてキモチわるくて体がかたまっちゃったけど、力を振り絞って、彼を押しのけました」
ハルカさんはなんとか逃げ出し、トイレにかけこんだ。
涙が止まらず、ついには泣きすぎて吐いてしまったらしい。
「吐いていると、寝室から大きな音が聞こえてきました。彼が怒ってなにかを壊している、といのがすぐに分かりました」
寝室には2人のこどもがいる。危険を感じたハルカさんは、いそいで寝室にもどった。
すると、部屋はふとんがグシャグシャになっていて、壁が殴りつけられて3か所穴が開いていた。そして本棚は床に倒され、ルームランプは壁に叩きつけられて、粉々になっていた。
なにか言おうとしたけど、ハルカさんは言葉がなにも出なかった。ケンジさんは無言のハルカさんの体を弾き飛ばしながら、「もうおまえなんかとは一生やらない」と怒鳴って部屋を出ていったらしい。
「そういうこと言うひとに限って、また誘ってきますよね」とぼくは言った。
「そうなんです。3日後にはフツーに抱きついてきました。でも私はもう2度と彼とエッチする気はないので、絶対に断っています
「断ったあとケンジさんはまた暴れたりしませんでした?」
「なにかを壊す…というのはなくなりましたけど…長男に辛くあたるようになりました」
ハルカさんはためらいながらも話してくれた。
「正確に言うと、長男にはいつも厳しいですが、エッチを断ったつぎの日とかはそれがさらにひどくなります」
ハルカさんの息子さんは、すこし他の子より発達が遅れているらしい。
漢字や計算が得意でなく、教えてもすぐに忘れてしまうという。
「長男が持ちかえってきた学校のテストを見て、ブチ切れる。おまえはバカだ、このままじゃまともな大人になれない、こんな漢字みたことない、九九ができないのはあの学校でおまえだけ……こんな調子がずっと続くんです」
そしてハルカさんがかばうと、かならず「おまえが高卒だからこんなバカが産まれるんだ」と言ってくる。そして次男を指さして、「こいつもどうせバカになる」と吐き捨てるらしい。
きっとケンジさんはハルカさんにセックスを拒否されることで、家族の中で孤立したと考えたのだろう。
頭のなかで1対3の図式をつくってしまったんだとおもう。
ここで育児論を語ると長くなるし、主旨が変わってくるのであえて書かない。
がこれだけはいいたい。
どんな理由があるにせよ、こどもを傷つけるヤツは最低だ。暴力でも言葉でも。
「なのでセックスを断るたびに毎回つぎの日が怖いんです。またこどもたちが巻きこまれるんじゃないかって」
「ひょっとしたらケンジさんはハルカさんの不安を煽るために、お子さんにひどいこと言ってるのでは?」
「それは感じます。言いすぎかもしれませんが、こどもを人質に取られて“こいつらが可愛いけりゃやらせろ”みたいな」
しかしハルカさんは、もう一生ケンジさんとセックスはしない、とぼくに断言した。考えられない、と。
そして現在、離婚に向けていろいろ秘密裡に動いているという。
けっきょく3時間ちかく、ハルカさんとは話した。
まちがいなく、人生でいちばん“濃い会話”をした3時間だった。
最後にハルカさんはこうにこやかに言ってくれた。
「だれにも話せない、ずっと溜まってたものを吐き出すことができて、すごくスッキリしました。またよかったら話をさせてください」
初対面(といっても画面上だけど)のぼくに、言いづらいことも包み隠さず話してくれたハルカさん。
本当に感謝している。
ハルカさんが今回お話してくれたことは、それだけで1冊の本ができるぐらいで、ここですべてを書ききれなかった。
なので今後のハルカさんのことも含めて、また記事にするかもしれない。
※記事にあるようにハルカさんとはツイッター経由でコンタクトをとった。
しかしハルカさんはご自身のツイッターアカウントを拡散させたくない、と考えている。なのでぼくも記事からハルカさんのアカウントを特定できないように配慮している。
ちなみにぼくがツイッターでフォローしているなかにハルカさんはいない。そして“ハルカ”という名前はここだけの仮名で、彼女のツイッター上での名前も“ハルカ”ではない。
なおハルカさんには、事前にこの記事の下書きを見てもらったうえで、記事公開の了承をもらっている。
今回の記事はここまで!読んでいただきありがとうございます。
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